人口減少という現実とまちのかたち

誰しも自分の生まれ、育ち、住んでいる地区を、ずっと、このままで維持したいし、残ってほしい。その気持ちは、同じである。

いなべ市議会で何度も議論になることの一つ「高齢者の交通手段」。特に福祉バスに関してである。本数や路線数など、完璧で便利かといえばそうでなく、自宅からバス停までの距離、始発や最終バスの時間帯と通勤・通学の時間との不一致、また、土日や年末年始は、バスが運休してしまうなど、課題はたくさんある。そうしたなか、何度も執行部もバス路線、時刻表、ルートの検討をし直しているのも事実。近年は、定年制が延長したことで、シルバー人材等の運転手の確保の難しさも大きな課題となる。

市は公共交通(福祉バスと北勢線)に、毎年約2億円の予算を投じているが、いなべ市の人口規模で2億円もの予算を毎年かけている自治体は、全国でもあまりないという。

それでも、福祉バスの利便性が悪いのは、いなべ市の独特の地形による。そうした執行部からの説明も何度も聞いいた。

いなべ市は樹状的に広がった員弁川水系が形成した土地に、集落(旧村=自治会)が点在している。集落は、川上から川下まであり、基本的には川に沿った道路が集落同士を結んでいる1WAYである。つまり、明確な市街地というものがないため、ランダムに顧客を拾うようデマンド交通には適さない。

1WAYであることで、1つのバスが往復する時間が大変長くなる。そのために、バス路線と本数が大きく制限されることとなる。

さて、もう一つ考えたいのは、いなべ市の人口が維持できるか否か。

市は、次の総合計画で、人口維持の目標設定をかなり高く数値化している。仮に人口は維持できても、合計特殊出世率が国や県平均を下回っている当市では、高齢者が大幅に増加する。若い世代の流出数から考えて、若い世代が止まるかといえば、現実はなかなか厳しいだろう。高速道路が開通することで、大きな企業がさらに誘致でき、同時に、団地開発が行われ、従業異のほとんどが市内に住んでくれるなど、余程、人口誘致を目論んだ施策を計画的に行わない限り、リアルティはない。現状、市は積極的に移住施策を展開はしていない。たまたま、ブランディングが進み、まだまだ実数では少ない移住者が空き家等を探しているぐらいで、都市部のベッドタウンを目指すなど、攻めるような移住施策などは、全く行っていない。

まあ、特化したインセンティブ的な子育て施策を展開しているわけでもなく、明石市のような思い切った施策を期待できないことから、出生率が上がることも難しければ、若い子育て世代がわんさか移住もしてくる可能性も少ないので、人口減少は確実に進んでいくだろう。


人口減少のなか、特に中山間の集落では、高齢化が早くすすみ、人口減少も早く、急激な過疎化していく。今でも高齢者の一人住まいは大変多くなっている。それでも、道路や水道菅等のインフラは維持していかなければいけない。福祉バスも同じようにはは知らせなければならない。加えて、高齢者増により、医療費や福祉予算はどんどん増加しく。

私は以前、「いなべ市はコンパクトシティについて何か考えていることはあるか?」と一般質問をしてみた。市からは「全くありません!」との回答。着想もない感じであった。この大変、明確な答弁に、私は、少し怖さを感じた。

おい・・・大丈夫か・・・10年、20年後、市民は安心して生活できてるのか?先送りしていないか・・・・?(答弁を聞いた時の私の心の声)

しかし、まあ、その反応も若干理解できる。コンパクトシティ化を掲げている青森市や富山市などの施策は、実際に、うまくいっていない。住民の意識の転換を促すことが難しいからだ。今まで当たり前で、先祖代々暮らして場所に、今まで通り自由に住む権利に制限をかけることなど、すぐに受け入れられるはずがない。特に、受け継がれてきた家や土地を大切にする文化がある田舎では、尚更だ。

しかし、そのまま放置しては・・・・

写真は、アメリカある、サンシティという「老人の街」。規模をはじめ日本でも同じような街を作るのは相当難しいと思うが、その発想やそこから学べることも多いと感じる。

「サンシティ」は、1960年にアメリカの不動産会社デル・ウェブ社によりアリゾナ州の砂漠の真ん中に開発された人為的に造られた街。入居者は、55歳以上と制限されている。リタイアメント(退職後)・コミュニティと呼ばれる住宅街で形成され、退職者が住みやすいように様々な工夫が凝らされている。

街は7つの円状の街区からなり、どの家からも1マイル(約1.6km)以内で中心にあるセンタ-に行くことが可能。センターには、ゴルフ場、金融機関、中央病院等がある。他にも、ショッピングモール、郵便局、娯楽施設など生活に関する全てが集まっており、高齢者に優しい、便利な街だ。

金沢には、Share金沢という福祉法人がつくった実験的なまちがある。健常者が暮らす施設としてサービス付き高齢者向け住宅(全32戸)、学生住宅(全8戸―このうち2戸はアトリエ付き住宅である。)がある。学生たちにはボランティア活動をすることによって家賃を割り引く仕組みを導入することで、障害者との積極的な関わりを生み出そうとしている。高齢者の地方移住コミュニティモデルとして先駆的事例として全国の自治体からも視察が相次いでいる。

2016年6月に、政府は「生涯活躍のまち」実現に向け、協力して検討を進める自治体として、岩手県雫石町、新潟県南魚沼市、石川県輪島市、山梨県都留市、長野県佐久市、鳥取県南部町、福岡県北九州市の7つの市と街を選定した。いずれも、50代以上の人が、「東京圏をはじめとする地域の高齢者が、希望に応じ地方や「まちなか」に移り住み、多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくり」(『生涯活躍のまち』構想(最終報告))を目指してきたが、その同行にも注目していきたい。

多分、まちのかたちまで考えないと、間に合わない。

いなべ市議会議員 篠原史紀 しのはらふみのり WEB

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